なぜ grooves はフレックスでの深夜勤務を認めることができなかったか?

昨日 2月末に株式会社groovesを退職します を発表したエンジニアのマネージャーを務めている(2018年1月時点)赤川です。

本記事の前半では、なぜ彼が望む「フレックスでの深夜勤務」を用意できなかったかを紹介し、後半では彼と共にプロダクト開発に携わってきた立場から、彼の推薦文を書きます。

なぜこの記事を書くのか?

  • フレックス制度の導入を検討している会社の参考にしてほしい
  • エンジニアの成長・キャリアアップを応援する Forkwell を運営している会社が、自社のエンジニアのキャリアアップや転職を応援しないのは嘘になるので、感謝をこめて送り出したい

今回の経緯

まず、今回の件について、彼とどのように会話を進めてきたかを紹介します。

  • 2017年8月 1on1 MTG で、自身の生産性をあげるためにフレックスを導入したいと伝えられる。フレックスについて調査開始。
  • 10月 エンジニアチームに、深夜時間以外でのフレックスを試験的に導入する(コアタイムは14:00-18:00に設定、月初・週初は対象外)
  • 11月 フレックスを試験導入から本導入へ移行(同上)
  • 12月 彼に退職したいと伝えられる。その際、フリーランスは可能かと正式に相談される
  • 同月 フリーランスの条件を提示する

これ以前にも、火〜金はリモートするかどうかを個人で判断できるようにするなど、エンジニアの自由度を広げていました(詳細は HOW GROOVES REMOTE WORKS を見てください)。

どのような文脈で進めたか?

grooves は「ワーク・シフトインフラを創る」をビジョンに掲げている企業です。 簡単に言うと、新しい働き方・流れを世の中に提示し、そのインフラを作ることを目指しています。もちろん、Forkwell もその大本のビジョンの元で運営されています。

「ワーク・シフトインフラを創る」をビジョンに掲げる以上、私たち自身も率先して新しい働き方をしていく必要があります。

そのため、リモートワークやフレックス制度などについては、会社全体で挑戦していく風土があります。

これまでも、個人のライフステージの変化に合わせて

  • 結婚を機に大阪に引っ越す社員のために、大阪にリモートオフィスを借りる
  • エンジニアだけでなく、全社でリモートワークを導入する

といった挑戦をしてきました。

今回のケースのように、全ての要望を実現できるわけではないですが、会社全体の生産性を上げるためであれば、実験する土壌はある会社です。

そんな風土をもつ grooves が、なぜ深夜のフレックスだけは導入することができなかったのでしょうか?

フレックス制度で、深夜の勤務を認めることができなかった理由

まず、フレックス制度に関して社労士などを通じて調べたことを記載します。
(なお、私自身は法律家ではないので、間違いがあるかもしれません。本文を鵜呑みにせず、社労士などにも確認してください。)

  • フレックスタイム制とは、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)を遵守したうえで、労働者が各自の始業時刻と終業時刻を原則として自由に決められる制度。
  • 1日の労働時間規制に代えて、清算期間における労働時間の合計によって勤務時間・時間外労働の有無が判断される。
  • フレックスでも勤務した時間はきちんと管理しなければいけない
  • 深夜帯に勤務した場合(22:00-5:00 が対象)は深夜割増賃金で支払わなければいけない

これが何を意味しているかというと、

  • もし全く同じ能力の人がいるとして、同じ労働時間・同じバリューだけを発揮している場合でも、個人の判断で深夜帯に働いた人だけが、給与を多くもらえることになる
  • 深夜勤務を認めたとしても、稼働時間を細かく申請してもらうことが必要となる

といった、難しさが生じることがわかりました。

これに対応するためには、深夜割増賃金まで見込み給与に含む等の制度に変更する必要があります。

さらに問題なのは、勤務時間の登録の義務付けは引き続き必要となるため、それを「10分遅れてもSlackで連絡すれば問題ない雰囲気」といえるかというと、管理されている感はでてしまいます。何より手間です。

そのため、法律に目をつぶる以外で、深夜帯に個人の裁量で働ける仕組みを見つけることができませんでした。

フリーランスなら解決するのか?

そこで出たのがフリーランス(業務委託)という選択肢です。 ここではまず、正社員とフリーランスの違いについて記述します。

正社員 業務委託
契約 雇われる者が雇い主に対して労務を従うことを約束し、雇主がその対価として報酬を支払うことを約束することによって成立する契約 一事業主として特定の仕事を処理することを目的として行なわれる契約
社会保険 あり(雇用保険、厚生年金、健康保険、労働保険 等) なし
その他社会保障 労働基準法に準ずる
最低賃金、有給休暇の有無、産休育休の有無 等など
最低賃金や有給休暇など、労働に関する法令が適用なし
雇用期間 基本は無期雇用 有期契約(1~3ヶ月契約にしているケースが多い)
時間・勤務地の拘束 労働基準法及び就業規則に準ずる 時間的拘束、勤務地の拘束はできない(双方の内規的な取り決めは実際のところするケースが多いが、企業から厳密に指定するのは違法
税金 年末調整の対応のみで確定申告の必要なし 確定申告が必要
給与の支払い方法 会社側で給与計算=>支払い 本人から請求書=>支払い
交通費 実費支給 基本は特に支給なし ※
小口精算 実費支給 基本は特に支給なし ※
勤怠管理 必要 必要なし

※ 会社主導の遠隔地の場合は、双方協議で負担する場合あり

他にも、フリーランスには以下の特徴があります。

  • リスクがある分、正社員より手取り額が高くなる可能性が高い
  • 受発注関係になるため、成果物でのみ評価され、人事考課は関係ない
  • ストックオプションを行使する際に、税金の徴収額が大きくなる

フリーランスなら、彼が望む働き方に近づけそうです。

本人にとっては、grooves で活躍してきた実績もあるため、初めての会社と比較すれば打ち切りリスクも少なくなります。
grooves としては実質的な支払い額が増えますが、制度変更よりは少ない投資で済みます。
他社に転職してしまうリスクは増えますが、何もしなければそのリスクは一層高まったでしょう。

結果的に彼は、このまま grooves で正社員を継続するメリットはないと判断し、今回の結論にいたりました。(もちろんフレックスだけが全ての理由ではないです。)

今回、grooves でフリーランスという選択肢が残っている上で、彼がWeb上で退職を表明したのは、広く世の中に自分の可能性を問うためです。

繰り返しになりますが、エンジニアの成長・キャリアアップを応援する Forkwell が、自社のエンジニアのキャリアアップや転職を応援しないのは嘘になりますから、寂しい気持ちはあるものの、ぜひ応援したいと思います。

推薦文

マネージャーの立場から見た、彼の長所は、

  • 圧倒的な実装スピード
  • ロジックに関する的確なレビュー
  • 高い問題意識と自主性
    • 彼の問題意識をきっかけに、形成された開発文化が多々あります
      • PRへのレビューは24時間以内に2人以上(ユーザーに早く価値を届ける、手戻りまでの期間を短縮するなどの意図)
      • エラーはすぐ確認する 等
    • この問題意識の高さは、コードや開発環境だけでなく、会社の制度にも波及します
  • 社外活動に積極的で、エンジニア界内での認知度・つながりが多い

です。

一方で、彼が苦手とするのは、

  • よそ見をしがち 
  • 興味のない分野でパフォーマンスがわかりやすく落ちる
  • 忖度

などがあり、言われたとおりにだけ働くタイプではありません。
「えっ?いまそれやってるの?」ということもあります。そういったことからアイディアを生み出すのが彼の魅力でもあるのですが。

すでに多くの会社からオファーが来ているようですが、我こそはという会社は、引き続きぜひ声をかけてあげてください

エンジニアを募集しています。

Forkwell では Rails エンジニアを募集しています。 今回、良くも悪くも私たちがどのような会社かが表に出ましたので、このような私たちを良いと思える人にこそ、ぜひ遊びにきてほしいです。

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となりの事業部の Crowd Agent でも Rails エンジニアを募集しています。

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また、自分からエントリーするのは恥ずかしい、と思われた方は、ぜひ Forkwell Scout に登録してください。

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皆さんのプロフィールを一人ひとりじっくり拝見し、興味を持った方にはこちらからお声がけさせていただきます。

引き続き、エンジニアの成長・キャリアアップを応援するサービスとして努力してまいりますので、 grooves をよろしくお願いします。